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第41回 -新年のお喜びを申し上げます-   

  
       新年のお喜びを申し上げます。
              今年もよろしくお願いいたします。

 今年のお正月に、大江健三郎の1994年12月7日ストックホルムにおけるノーベル賞受賞記念講演会での講演「あいまいな日本の私」を読み返しました。
そのなかで、日本人作家として、初めてこの場所に立った川端康成が「美しい日本の私」という講演をしたことが紹介されていました。

 「川端は、日本的なさらには東洋的な範囲にまで拡がりを持たせ、独自の神秘主義を語りました。
独自の、というのは禅の領域につながるということで、現代に生きる自分の心の風景を語るために、かれは中世の禅僧の歌を引用しています。
しかも、おおむねそれらの歌は、言葉による真理表現の不可能性を主張している歌なのです。
閉じた言葉。その言葉がこちら側につたわってくることを期待することはできず、ただこちらが自己放棄して、閉じた言葉のなかに参入するよりほか、それを理解する、あるいは共感することはできないはずの禅の歌」

 大江健三郎は、この講演を「それはきわめて美しく、またきわめてあいまいなもの」であったと、と同時に「川端は、アルフレッド・ノーベルが信頼と希望を託した未来の人類に向けて、同じく心底からの呼びかけを行っていたのです」と述べています。

 この国が「美しい」という言葉で表現されるとき、「この言葉がこちら側につたわってくることを期待することはできず、ただこちらが自己放棄して、閉じた言葉のなかに参入するよりほか、それを理解する、あるいは共感することはできない禅の歌」に通じるものがあるのでしょう。
それゆえ、こちらは自己放棄せず、この言葉の実体を作り上げる必要性があるでしょう。  

園長 原田 豊己神父


 


 

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